制御工学博士の日常+備忘録

ようやく制御工学で博士を手に入れたので真っ当な人間になるべく研究以外の事とか色々と備忘録的にやっていく。そんな感じ

アカデミックの指導者目線で博士進学について考える

どうも。kwaz6です。

博士課程について、色々と言われていることはありますが、素直にアカデミックの指導者の目線で今回は博士進学について考えてみたいと思います。

(ちなみに私はまだ学生を指導できる立場ではないので、先生方の立場になった時のことを考えて執筆しています。)

 

 

博士の必要性

博士号の必要性について、良く先生方から言われていることをまとめていきたいと思います。

  1. 科学の発展に貢献
  2. 専門家としての活躍・説得力

まず一つ目は、多くの記事でも書かれていると思いますが、科学の発展に貢献するということです。これまで先代が作り上げてきた理論も初めのころは何の意味があるかわからないものもたくさんあったと思います。

現在でもその研究何の意味があるの?とかありますが、結局のところ今なんの役に立つかわからないけど将来的には何からしら役に立つだろうってことだと思います。

(個人の偏見が入っておりますが)ロボットの制御とか自動車の制御とかそういうのは身近な応用例があるので説得しやすいと思いますが、宇宙物理学とか新しい材質?の開発とかそういうのは一般の人にはぱっと見何がすごいのかわからずそういった研究は意味がないと見られがちです。

これは結局のところは金になるかならないかで必要かどうかの判断が下されているのが世の中だと思っています。

しかしながら、現代で応用されている技術の全ては先代の科学者たち、その多くは博士号を持つ研究者たちが人生をかけて作り上げてきたからこそ、今の社会が成り立っていると思っています。これが一つ目の博士の存在意義です。

 

二つ目は、ある分野の専門家として活躍できるということです。日本の社会では、博士は使いづらいし、自社で社員を一から育成するからいらないというところが多いのは事実だと思います。私もそんなことを言われた時がありました。

ただ、海外のエンジニアの話を聞いてみると博士がない人はあまり信用してないっていう人がいるので、日本の有名企業だったら、企業のブランドで問題ないと思いますが、規模が小さくなればなるほど、博士号が説得力を増すことになるので新たな市場開拓で海外に展開する場合には博士が必要だと思っています。当然、博士だけでなく、実績が重要だとは思いますが。

 

上記で色々書いてはいますが、ここから先は結局個人の能力次第なとこかなと思います。博士号も結局はただの資格で信用を得る程度なのかもしれません。日本だったらTOEIC900点です。とかだと英語が堪能な人という認識ですが、話せない人も中にはいるみたいです。でも結局TOEIC900点とかあれば就活では有利ですし、英語が話せない人が多い日本では尚更効果を発揮するんだと思います。なので、博士もTOEICと似たようなことで他の人に比べたらその分野に詳しいってことになると思います。(だから足の裏の米粒とか言われるのかな。)

博士に行くべき人

 それじゃあ、どういう人が博士課程に進学すべきなのかということを考えてみたいと思います。私も現に博士課程に進んで博士号を取得したわけですが、単純に2通りしかないと思ってます。

  1. 研究者になりたい、研究が大好きな人
  2. 仕事柄、必要になった人、必要だと思っている人
  3. (気が付いたら博士になってた人)

二つと言いつつ三つ書いてありますが、大体の人は一つ目と二つ目だったりするんじゃないかなと思います。

一つ目の方は、何もありません。そのまま博士に行くべき人です。当然研究室のボス次第では博士進学試験で落とされてしまうこともあるかと思いますが。

 

二つ目は仕事柄、必要になった人、必要だと思ってる人です。

昔がどうかはよくわかりませんが、最近社会人博士を見る機会も増えてきたかなと個人的には思っています。そういった方に聞くと、今やっている仕事にやりがいがなくなってきて新しいことをやりたいって時に誰か博士取らないかって感じでとる方だったり、博士号を取りながらその分野の仕事に従事するっていうのがあるみたいです。社会人博士は論文誌5本必要とか聞いたりするんで仕事しながらは大変だなって思いますが、給料が出る分今の課程博士よりは心に余裕があるのかもなって思います。(精神的辛さはどちらが辛いってのは正直両方一緒かもしれませんが)

 

三つ目は一応書いておきます。

修士で就活する方が多い日本社会を考えても、就活について特に何もやりたいことがなく、ただ進学して先延ばしにする。とか流されるまま博士になった。って人は意外といるみたいです。三つ目に該当する人の問題点は博士が取れたら良いとはまったく問題はありませんが、博士号が取れそうにないって状況になったときが大変だと思います。

実際同期でも親に博士行ったら?って感じで言われて、親にも言われたから行くことにしたとかいう人もいて、実際研究がうまくいかずに軽い気持ちで博士こなきゃよかったって人はいました。

ま、これに関しては博士に来たのが問題なのか。自分の意志で行くという決定をしなかったのが問題なのかはわかりませんが、やはり明確な理由がなく博士に進学した人は結構辛い状況になる人が多いのかもしれません。

 

ちなみに私個人の話になりますが、私の場合は修士卒と博士進学で揺れててなんだかんだ博士なんて就職先も狭まりそうだし、今の研究を続けてある程度答えを出したいって気持ちもありましたが、自分の実力では取れなそうだからという理由で修士で就活をしてました。結果的に博士進学と修士卒の気持ち半分な感じで就活したら一次面接で落とされました。これが逆に今の自分は企業にはいらないんだって思っちゃってそれならいっそのこと博士号とってやる!って思い、博士進学の後押しになってしまったんですけど。今は無事博士号が取れたので安堵してます。

指導者目線の博士の必要性

じゃあ、実際博士がどれだけ必要か?について指導者目線に立って考えてみたいと思います。

研究者が実績を積み上げていくうえで大事なものは何かについてまず話すと

  1. 論文誌の数
  2. 獲得研究費(科研費や財団など)

が主だと思います。

一つ目の論文誌の数は特に重要なのは自分が第一著者(first author)の論文誌です。

これはその人個人の研究能力を図るのに一番良い指標であると思います。論文の数が多いということは数の面で見ればそれだけ科学の発展に貢献しているということになるからです。

しかし、研究室を持つと、研究資金を集めたり、授業準備などに時間を割いてしまい、実際に研究する時間はほとんど無いというのが今の研究者の現状になっています。じゃあどうやって論文誌の数を増やしていくか。これは博士課程の学生が入れば簡単に解決します。博士課程の学生が博士号を取るには最低2本は論文誌を掲載確定にしなければいけません。つまり、博士学生がいる分だけ論文誌の数が増えやすいということになります。これは指導教員としては研究資金を頑張って集めたら学生が成果を出してくれるということになるのでやはり博士の学生が必要になってきます。また、自分一人では複数の研究ができなくても学生が博士を含めて多くいれば多くの研究を行うことができます。特に博士は強い戦力なので研究の進捗がすごいことになります。博士学生を増やすことは自分の探求心を広めることにも繋がります。また、博士が多ければ多いほど研究室の修士や学部の学生指導も教員が見る負担が減るため、研究室運営としてはかなり良くなります。

 

二つ目は一つ目の話に関連しますが、研究者が行っている研究が一般的に重要だと認められている。あるいは認めさせる能力がある。という点で獲得研究費があるかどうかが採用を獲得する際に有利に働く点になります。これはそれだけでなく結果的に一つ目の論文誌の数にもつながるので、研究者の評価やアカデミックの就活に大きな影響を与えることができます。言い換えれば、一つ目の論文誌の数が増えるということは新たな研究費にも有利に働くということになります。

 

もちろん博士の必要性は上記二つだけでなく、マンパワーという意味でも博士一人いるだけで研究室の運営はかなり良くなります。逆に博士の学生にほとんどの雑務が降ってくるので、卒業まではかなり忙しい状況になります。私の場合もかなり忙しく、三日で国際会議の論文なんか出して。とか研究室見学を平日・休日関係なく振られるとかよくあり、まともな休日というのがあまりなく不満はありました。こういうところは研究者職業の良くないところなのかもしれません。

 

以上のことを踏まえると、指導者目線では「博士の学生が多い」=「論文誌の数が増える」+「獲得研究費が増える」+「研究室運営の質向上(マンパワー増)」につながるのかと思います。

 

しかしながら、上記の指導者目線の点を考えて学生を勧誘すると絶対に来ないので、博士の立場が変わってくるともっと増えてくるのかなと思っています。

正直、学生目線だと博士進学のメリットが研究が楽しい、好きとかの人以外あまり無いような気がしちゃってます。ただ、会社の社長とか調べてみると大体の人が博士号持ってたりするので、やっぱりいるじゃんって個人的には思います。

なので、博士課程に進学した人は、専門だけでなく自分の価値を高めたり、卒業を確実なものにするために指導教員や周りの学生を利用することも考えると良いんじゃないかなと思います。

まとめ

今回は指導者目線で博士進学について考えてみました。

まとめると以下の通りです。

  1. 論文誌の数が増える
  2. 獲得研究費が増える
  3. 研究室運営の質向上につながる⇒マンパワー増により研究領域の拡大が可能

上記を満たすことで、結果的に科学の発展に貢献できるだけでなく、研究領域としても拡大し、探求心も満足される。そして研究者として生き残っていくことにつながっていくことになると思います。こんなことを思いながらも博士が増えるように何かしら貢献していけたらなと思いますね。

 

もし、今研究で行き詰まっている。または制御のここがわからないって人は言える範囲で相談してくれたら、可能な限り考えたり、理論だったりの解説をしてみたいと思います。

 

 

一応、私が博士号取得までに心がけていたことは以前書いたのでそちらも参考にしていただけたらと思います。

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